大和ハウス工業　戸建住宅【寄付付き商品（８）】

東日本大震災被災地応援プロジェクト！	（C）一般財団法人　ダイバーシティ研究所
ダイバーシティに配慮した避難所・まちづくり・復興計画を

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企業による震災復興支援【寄付付き商品（８）】

会社名：大和ハウス工業株式会社
http://www.daiwahouse.co.jp/index.html?adw=sougou_002a
商品名：戸建住宅　（1棟販売する毎に1,000円を寄付）
2011年4月から2016年3月までの5年間を予定 http://www.daiwahouse.co.jp/release/20110711105248.html

大和ハウス工業
震災復興支援戸建住宅「xevoK～絆～」

大和ハウス工業は、2011年7月11日、東日本大震災による遺児・孤児の経済支援のために、桃・柿育英会の「東日本大震災遺児育英資金」へ寄付することを発表した。戸建住宅（分譲住宅含む）1棟販売につき1,000円が寄付にまわる。また、その対象期間は、2011年4月から5年間と長期支援も決定している。
震災後の被災地支援の取り組み、そして寄付付き商品による支援について、CSR推進部社会共生グループのグループ長小林征人さんと岩橋芳郎さんにお話を伺った。

＊＊＊

－ダイバーシティ研究所：東日本大震災発生後、緊急支援としてどのような動きをとられましたか。

震災後、本社（大阪市）でBCP（※）の一環として備蓄していた毛布、非常用持ち出し袋、電池、水等の物資を被災地の事業所に送り、そこから必要に応じて避難所等へ物資配布しました。また、被災地の営業担当者は、お客様の安否確認と建物の被災状況確認のために個人・法人のお客様のもとを訪ね、訪問時には当社で用意したマスクや水をお客様に配りました。

また、大和ハウスグループでは、役職員と会社から合計1億6,000万円の義援金を拠出しています。こちらは、日本赤十字社と大阪商工会議所へ寄付しました。
社員からの募金については、震災前から持っていた募金システムを活用しました。当社では「エンドレス募金」「ハート募金」（※）という2種類の募金システムを持っています。
「エンドレス募金」は社員が毎月給与天引きで募金に参加できるシステムで、「ハート募金」は今回のような大規模災害の際に一時的に寄付を募るシステムです。今回の震災では社内イントラを通じて全社員に「ハート募金」への募金を呼びかけ、社員から約６０００万円が集まりましたが、合わせて会社からマッチングギフトとして約１億円を寄付しています。募金システムは社員に浸透していたため、募金の呼びかけにも、社員は素早く前向きに応じてくれたと感じています。

＊エンドレス・ハート：大和ハウスグループとお客様との絆や大和ハウスグループの連帯感を表した大和ハウスグループのシンボルマーク

＊BCP（事業継続計画）：企業が自然災害、大火災、テロなどの緊急事態に備え、事業資産の損害を最小限にとどめ、事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続方法等を決めておく計画

－社員ボランティアを派遣されていますが、具体的にどのような活動をされましたか。

震災当日、災害対策本部を立ち上げ応急仮設住宅の建設にとりかかりました。そのため、技術系の社員をはじめとした多くの社員を仮設住宅建設のために被災地へ派遣していたため、社会貢献活動に多くの社員が関わり始めたのは体制が整った5月頃からでした。社員の参加は本社からの呼びかけではなく各事業所の発案のものも多くあります。未曾有の震災であったことから、事業所の有志が率先して企画し、ボランティアに参加しました。陸前高田市、大槌町、石巻市等で活動している支援団体に各企画担当者が連絡を取り、がれき撤去、泥出し等の活動に参加しています。当社では震災前から、社員がボランティアに参加しやすい環境を整えてきており、管理職の理解も進んでいたことが震災時にも活きたと思います。

CSR推進部では、社会貢献活動を単なるボランティア活動として捉えてはおらず、人を育てる活動であること、即ち「人財育成」だと考えています。社員は会社の財産であるという考えから、「人財育成」は「財」という字を用いています。
社会貢献活動は、通常の業務内では交わることのできないステークホルダーの方々とコミュニケーションをとることができる良い機会です。短期的な視点では会社の業績アップに直接つながる活動ではありませんが、社会貢献活動を通じた「人財育成」により、確実に社員の人間力を底上げすることができます。

また、社会貢献活動を会社が認めていることを社内に周知するため、2006年には社長表彰制度を設けました。これは社会貢献活動に積極的で特徴ある活動に取組んだ事業所を表彰する制度です。さらに、社内へのコミュニケーションツールの一つとして「CSRニュース」を作成し、社会貢献活動への関心を高めるため役員が社員に向けて社会貢献活動についてメッセージを発信することもあります。

また、全国の事業所に「社会貢献推進委員」を置き、推進委員が事業所内の社会貢献活動をけん引する役割を担っています。毎年２回、ＣＳＲ推進部の主催で社会貢献推進委員を招集し、社会貢献推進委員会を招集しております。委員会では各事業所の委員が社会貢献活動に関する活発な意見交換を行います。特に昨年５月の委員会では、被災地の事業所所属の委員も参加し、現地の被災状況を聞くことができ、今後どのような活動をすべきか具体的に考える契機になりました。その後、委員会で出された意見も踏まえながら、CSR推進部ではボランティアバスツアーの企画や、新たな募金の呼びかけを実施しました。
委員会の参加者からは「支援をしたいと思うが、何から取り組めばよいだろうか」という相談もあったので、従前からある募金システム「エンドレス募金」の中に被災地支援のための「自然災害枠」を作り、被災地で支援活動を行う3団体に社員の寄付を届けることにしました。

このように日頃から顔が見える場を作ってきたこともあり、会議の場だけでなく、CSR推進部担当者あてに社員から直接ボランティア活動の相談が届くこともあります。

－「桃・柿育英会　東日本大震災遺児育英資金」に、2011年4月から2016年3月までの5年間、戸建住宅（分譲住宅含む）を一棟販売する毎に1,000円の寄付を行うことを発表されています。このような長期間の支援を行うことになった理由や「住宅」を寄付付きとして売り出すことになった経緯を教えてください。

当社では2010年より、住宅販売の売上の一部を寄付に充て、学校等に桜を植樹する支援活動をしています。今回は、この仕組みを用いて被災地支援のために寄付することにしました。それが「桃・柿育英会」への寄付です。この取り組みは、会の実行委員長であり当社は長いお付き合いがある建築家　安藤忠雄氏（※）から協力依頼をいただき、活動趣旨に共感したことから「桃・柿育英会」への支援が決定しました。「桃・柿育英会」では、継続的な支援を掲げています。当社でも一過性の支援ではなく、長期的な支援が必要との考えから、支援期間を5年間としました。阪神淡路大震災直後は様々なメディアで被災地の状況が報道されましたが、時間の経過とともに報道も減り、社会の関心も薄くなっていきました。その経験もあり、この寄付付き商品だけではなく、他の支援活動についても、なるべく長期間にわたる支援をしたいという意識を持っています。
住宅は高額な商品ですので、その値段と比較すると1,000円という金額は少ないように感じられるかもしれませんが、5年間で総額5,000万円程度の寄付を予定しています。

*桃・柿育英会・・・阪神淡路大震災時にも設立され、10年間で総額4億9,000万円を震災遺児・孤児に分配した団体。東日本大震災を受け、10年間経済的に遺児・孤児を支えるため、2011年5月に再び設立された。

*安藤忠雄氏は、大和ハウス工業のCSR活動に関してステークホルダーオピニオンも寄せている。大和ハウス工業株式会社CSRレポートは下記WEBからダウンロード可能。
「CSRへの取り組み」　http://www.daiwahouse.co.jp/csr/index.html

－実際に寄付付き商品として販売されたことで、反響などはありましたか。
　
当社と関わりのある団体から、この活動趣旨に賛同したので寄付をしたいとのお申し出をいただき、嬉しく思いました。また、グループ会社である大和リース株式会社でも、車を一台リース契約する毎に500円を「桃・柿育英会」に寄付する活動が始まっています。
社員にとっても、会社が寄付付き商品の販売を通じて長期的に支援をしていること、様々な支援活動に取り組んでいることは、業務のモチベーションアップにつながっていると感じています。

－5月には仮設住宅に、日除けのための緑のカーテンを作るプロジェクトも実施されています。夏に入ると仮設住宅内の室温の問題がニュースで取り上げられましたが、なぜ、5月の段階でこのプロジェクトに取り組むことができたのでしょうか。

大和ハウス工業
CSR推進部　社会共生グループグループ長　小林征人さん

震災直後、原発問題により全国的に節電が叫ばれておりましたが、被災地でも同様に節電が求められていました。また、阪神淡路大震災では、仮設住宅入居者の孤独死も問題となりましたが、仮設住宅での快適な暮らしの提供とともに、住民同士のコミュニティ形成も必要だと考えておりました。

ＮＰＯ法人緑のカーテン応援団が主催している「仮設住宅×緑のカーテンプロジェクト」です。このプロジェクトは仮設住宅３万戸に緑のカーテンを設置し、夏の暑さを少しでも和らげます。ただ単に緑のカーテンを設置するだけではなく、住民参加型の活動で、住民同士、住民と社員のコミュニケーションを図ることが期待されます。活動内容や趣旨が私たちの課題認識と重なり、当社ではこのプロジェクトで使用するプランターや培養土を提供し、社員も設置のボランティアに参加しました。

－冬に実施された「日曜大工プロジェクト」も住民参加型のプロジェクトです。このプロジェクトは、どのような経緯で始まったのですか。

仮設住宅の施工後、当社の役員が仮設住宅の管理運営会社の共立メンテナンス様から「庇（ひさし）が欲しい」「風除室内に棚が欲しい」といった現地ニーズを聞きました。
このニーズを受け、住みやすい環境づくりのために、日曜大工の材料と工具を提供することが決まりました。また「仮設住宅×緑のカーテンプロジェクト」と同様に住民同士のコミュニケーションをとることを念頭に置いた活動です。

2012年1月に第一回日曜大工教室を実施し、約３０人の参加がありました。当日の様子を見ていた住民の方々も興味を持ってくださり、第二回（2月）にはそれを上回る４０人に参加いただくことができました。当日は地元の方を日曜大工教室の講師として招き、住民・支援ボランティア・当社社員ボランティアでグループとなって棚を作りました。私たち社員は、なるべくアシスタントにまわり、住民の方が主体となって活動できるようサポートに努めました。

実際に「日曜大工プロジェクト」に参加した岩橋さんは、こう話す。

大和ハウス工業
CSR推進部　岩橋芳郎さん

「仮設住宅で棚を製作後、一緒に作業をした方に仮設住宅の部屋へ招いていただきました。生活の様子を実際に見て、お住まいになられている方の生の声を聞くことができたことは貴重な経験でした。また、作業をしながらご自身の被災体験を話す方もいました。本当に大きな震災であったことを改めて実感するとともに、被災地へは長期的な支援が必要であると感じました」。

資金やツールを提供するだけでなく、社員がプロジェクトに参加し、被災地の声を直接聞くことで見えてくることは多い。また、大和ハウス工業では社員や関係者から届く声を大切にしながら活動を進めているのも特徴的だ。

－被災地支援では、高齢者、障がい者など、様々な立場の方が必要とする支援を届けることも重要です。大和ハウス工業では、被災地の高齢者施設にセラピーロボットを無償貸与していますが、この支援のきっかけや施設の方からの反応はいかがでしたか。

当社はロボット事業を事業の一環として展開しており、アザラシ型セラピーロボット「パロ」の販売にも携わっております。「パロ」は、人と動物との触れ合いにより効果が期待できるアニマルセラピー効果（心理的効果：元気付け・ストレスの軽減、社会的効果：コミュニケーションの活性化等）が期待できるロボットで、アメリカでは「医療機器」になっています。そのパロの開発者である独立行政法人産業技術総合研究所の柴田崇徳主任研究員から当社に「被災地での高齢者等への支援が必要だ。CSRの一環として協力いただけないか」と相談がありました。CSR推進部でも「企業として継続的支援を行うためには、自社の経営資源を活用していかなければならない」と考えていました。

そこで、2011年4月にはパロと避難所を慰問し、その後、パロ50体を岩手・宮城・福島3県にある40以上の高齢者施設や仮設住宅街に2年間の無償貸与いたしました。高齢者施設からは、上記の効果の他、「施設利用者が夜、寝付けないときにパロがいることで落ち着きを取り戻すなど、心のケアにつながっている」という声をいただいています。

－今後はどのような支援活動を予定されていますか。

これまでの支援以外にも被災地自治体に対し、LED街路灯の寄贈も行いました。これは、「省エネ」「創エネ」「蓄エネ」の事業展開を行い、LED街路灯の販売も行う環境エネルギー事業部からの発案のあった支援です。このように、CSR推進部は、他部署・関係者から届いた声を形にしていく役割も担っています。社員ボランティア参加者に実施したアンケートでは、「（会社として）継続的に何か支援をしていかなければいけない」という声が多くありました。そのような声も受け、今後も継続性のある活動を検討中です。

また、CSR推進部に震災復興支援担当を決めています。現在、被災地で活動する支援団体などとの話し合いの場を定期的に設け、被災地でのニーズを聞いてまわっています。また月に2回程度は被災地を訪ね、住民の方とも交流を図りながら長期的な視野をもった復興支援活動を続けていく予定です。

（取材後記）
寄付付き商品による長期的な支援や、「緑のカーテンプロジェクト」等の様々な支援の背景には、阪神淡路大震災で感じた課題認識があったという。日が経つにつれ、メディアで被災地のことが取り上げられる機会も減っていく中、企業が長期的な支援を打ち出す意味は大きい。また、仮設入居者の孤独死防止を念頭においたプロジェクトの展開等、一人ひとりを大切にした支援の在り方は、支援団体や企業にとって参考になる事例ではないだろうか。（須磨珠樹）

各部署が支援活動の提案や相談をCSR室にもちかけやすく、また決裁も早く、すぐにプロジェクトが立ち上がるというご担当者のお話しに、組織の風邪通しのよさを感じた。CSR室が中心となり、各専門部署が連携して専門分野の支援をされており、CSRが全社に浸透している様子をうかがえた。（柳澤千恵子）

取材日：2012年3 月6日
取材：須磨珠樹（東日本大震災復興支援担当）
　　　柳澤千恵子（研究員）
文責：一般財団法人ダイバーシティ研究所

※メンタルコミットロボ「パロ」
http://www.daiwahouse.co.jp/robot/paro/index.html

※「仮設住宅×緑のカーテン」プロジェクト
http://midorinocurtain-kasetsu30000pj.jimdo.com/

※NPO法人緑のカーテン応援団　http://www.midorinoka-ten.com

※桃・柿育英会　http://momokaki.org/

（印刷用）