新潟中越地震(2004.10.23)の応急仮設住宅
新潟中越地震の概要
2004年10月23日、新潟県中越地方にマグニチュード6.8、新潟県川口町で最大震度7を記録する地震が発生しました。この地震で、死者68名、住宅の全壊2,827棟、半壊が12,746棟という被害のほか、土砂災害が多く発生したため、山間地で避難指示・勧告が出され、最大で約10万人が避難しました。新潟県中越地震への対応は、阪神淡路大震災の教訓が活かされて迅速な緊急救援体制がとられた一方で、避難先の車中で亡くなった方や地震のストレスによる疾患で亡くなった事例があり、避難生活の環境改善が大きな課題となりました。阪神・淡路大震災とは異なり、中山間地、豪雪地帯を襲った地震であったことから、災害特性に応じた対策が求められました。
豪雪地帯の応急仮設住宅
この地震では、小千谷市870戸、長岡市840戸、山古志村632戸、川口町412戸など、新潟県内13市町村、63ヶ所に計3,460戸の応急仮設住宅が設置されました。最初の入居は11月下旬から開始され、遅くとも12月中旬に鍵渡しが終了、年内に避難所は解消されています。プレハブの応急仮設住宅は、豪雪地帯であることが考慮され、2Mの積雪に耐えられる構造と天井裏に100mmの断熱材、屋根から雪を下しやすいように住棟の間隔を一定程度空ける、敷地内を舗装するなどの対応がとられ、玄関には「雪囲い」を設置する工事も追加で行われました。エアコンは一戸に1台は標準装備、洗濯機の設置スペースは屋内になりました。ソフト面でも阪神淡路大震災の反省を踏まえ、被災前の地域コミュニティが壊れないよう、地域単位で、できるだけ元の地域に近い仮設住宅団地に入居できるよう配慮がなされ、仮設住宅の設置と同時に、談話室24部屋、集会所19棟が建設されています。
数多く残ったハード面の課題
1)結露とカビ
新潟中越地震の仮設住宅は「寒冷地仕様」と言われましたが、多くの応急仮設住宅の構造は、むき出しの金属の柱と一枚板の外壁、一重ガラスの窓でした。鉄柱の一面が戸外にあり反対の一面は室内に露出していたため、夏は「火傷に注意」という回覧が出回るほど高温になり、冬はひどく結露しました。特に結露は、鉄柱のほかにも窓枠を固定する鉄のフレームや、窓ガラス、天井板の内側といたるところで発生し、避難所から仮設住宅に入居したばかりの住民を悩ませました。結露して滴り落ちた水が寝具や畳を濡らし、カビを発生させ、漏電など電気系の故障の危険もありました。結露対策として、外気を運ぶ柱にプラスチックのカバーをかけたり、NPO等の支援により窓に気泡緩衝材(いわゆる「プチプチ」「エアキャップ」)を貼ったりという試みが功を奏しています。
入居して一年目は、結露の他、室内の暖気が屋根裏で結露して天井裏に水が溜まったり、雪の重みにより屋根板が変形し、軒先や折板の合わせ目から雨水や雪解け水が天井裏に入って溜まるといった、様々な理由による“滴り水”とそれに起因するカビに住民は悩まされました。2005年の春から夏にかけて、電動換気扇を屋根裏に設置したり、天井にテープでの目張り、軒からの漏水を防ぐためのコーキングや水切りを追加したことは、2年目の冬に効果があったといわれています。
2)雪の影響
仕様では「耐雪2m」とされていましたが、中越地方の雪は重いため、1m程度の積雪でも戸が開きにくくなりました。「2年目からすき間風が入るようになった」との声があり、重みによる歪みの可能性が指摘されています。雪解けの季節には雪解け水が敷地内に溜まり、棟と棟の間に大きな水たまりが形成されました。仮設住宅の工法が、先に建物を建ててから周りに砂利を敷き、その中に排水管を設置する方法だったため、建物の敷地より排水管の位置が高くなり、排水不良となっていました。対策としては、U字溝の埋設や排水管を深く埋めなおす方法がとられました。しかし、その後のメンテナンス不足でゴミが詰まったり、排水機能が低下したところもありました。
<参考資料>
※本稿の仮設住宅のハード面に関する記述は主に、「仮設住宅の居住性」(木村悟隆、新潟県中越地震被害報告書,長岡技術科学大学(2005))より要約しています。下記サイトからリンクがあり、豊富な写真資料で事例が紹介されています。「被災地仮設住宅改善ネットワーク」ウェブサイトhttp://blog.livedoor.jp/kasetsu123/
※「社団法人プレハブ建築協会」ウェブサイトhttp://www.purekyo.or.jp/measures/index.html
|