東日本大震災被災地応援プロジェクト!
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NPOによる仮設コミュニティ支援 (阪神・淡路大震災より)

兵庫県神戸市東灘区の被害

東灘区は、神戸市を構成する9つの区のひとつで、神戸市の東端に位置し、南側の海に神戸市第二の人工島「六甲アイランド」(全域が東灘区)があります。阪神・淡路大震災において、東灘区は神戸市内の中で最も多くの死者数(神戸市全体の三分の一)を出した地域で、区の中央部は最大震度7を記録した激震地でした。区内の仮設住宅戸数は、市内第3位の32団地、3,883戸。そのうち2,090戸が六甲アイランドに設置されました。六甲アイランドの仮設規模は大きく、市街地からも離れていて、早くから入居者の孤立や空き室の目立つゴーストタウン化が指摘されていました。
 
東灘区の被害は甚大でしたが、位置的に大阪方面からのアクセスがよく、被災直後から多くの外部ボランティアに支援された地域でした。外部からの支援者と地域住民が共同で立ち上げた「東灘・地域助け合いネットワーク」は、生活復興の段階において、外部ボランティアから地元のボランティアによる体制へと移行し、さらにその経験を活かして地域に活動を展開した過程に特徴がありました。その活動の最初の一年を、設立時の代表のひとりである中村順子さんからお聞きします。

「東灘・地域助け合いネットワーク」語り・中村順子
(現・NPO法人コミュニティサポートセンター神戸 代表理事)【前編】

■立ち上げ期(1995年2月〜仮設入居開始まで)
地域情報の収集と資源の掘り起し

「東灘・地域助け合いネットワーク」(以下、「ネットワーク」)の立ち上がりは、1995年2月と、他の避難所支援のボランティア団体より比較的遅かったので、すでに避難所に入っていた他の団体とは活動をすみ分け、東灘地域の在宅避難者、主に地域に取り残された高齢者の支援に人海戦術で取り組みました。
 「水くみ110番」、「くらしの110番」、「よろず110番」など、被災直後の高齢者には難しかった給水所までの水くみ作業や、買い物、瓦礫撤去など頼まれごとには何でも対応。活動初期は被災地区の外からのボランティアが大半を占めていましたが、水道の復旧していない地域の洗濯を引き受ける「せんたく110番」では、地域の中での協力を促し、地元のボランティアの発掘につながりました。

地域をくまなく走りまわる活動の経験から、避難所の人が仮設住宅へと入居が始まることには、開いている店舗や給水所、医療機関などの地域の最新情報が集まっていたので、それらを印刷物(「かわら版」)にまとめて、仮設住宅入居者に配れるよう準備を始めました。

■仮設住宅入居期(1995年4〜7月)
地元住民によって仮設住宅のニーズを実施

2月下旬から仮設住宅への第一次入居が開始され、最初は高齢者・障害者の優先入居から始まりました。4月からは入居が本格化し、その頃から、「ネットワーク」で活動するボランティアの構成が大きく変化、被災地域外の人や学生が激減、それまでに開拓していた地元の主婦や高齢者層のボランティアが主力となっていきました。「ネットワーク」では、仮設住宅に入居して1ヶ月程の人を対象に、安否確認を兼ねたニーズヒアリングを実施。5月までに六甲アイランドも含む6か所の仮設住宅団地で856戸を対象に第一次ヒアリング調査を終えました。そこで見えてきた必要なパーソナルサポートはすぐに提供し、専門性の必要なケアは行政につないだけれど、入居者からネットワークに継続的なかかわりを求める声は少なかったといいます。「この頃は、入居者にも本当に自分に必要なニーズは見えていなかったのではないかと思う」(中村順子氏・談)

仮設住宅のニーズと地元のリソースをつなぐ

居住環境への改善ニーズは入居直後から高く、「雨水の溜まったぬかるみに砂利を敷いて欲しい」、「軒や庇をつけてほしい」、「手すりがほしい」といった要望が続出し、地域のシルバーボランティア(高齢者)が大工仕事に活躍。入り口の段差の解消は3団体より材料費助成を受け、また、8団体から制作協力を得て、希望者全員に約1000台の踏み台を配布しました。「街灯が欲しい」「クーラーが欲しい」といった一団体では手が出せない課題は根気よく行政に掛け合い、のちに住宅改造助成などで対応できるようになりました。

ソフト面の支援は、地域情報に詳しい強みを活かし「かわら版」による情報の提供(隔週発行)を開始。5月中旬〜8月にかけて、区内8ヶ所に設置された地域型仮設住宅に対して、生活情報MAPを提供しました。当時の仮設住宅団地には集会所は設置されておらず、コミュニティづくりのための場の提供の必要性を感じた「ネットワーク」は、仮設住宅入居者とのコミュニケーションのために敷地内にテントを張って「茶話やかテント」を始め、ここで活躍した人がのちに「ふれあいセンター」(常設集会所)の運営委員になっていきました。地域型仮設や小規模仮設(50戸未満の団地)では小型の「茶話やかパラソル」で巡回して、様々な催しを実施。可能な限り、仮設住宅入居者を講師にして、演芸、折り紙やバザー、料理教室兼炊き出しなど実施しました。テントで仮設住宅団地を回る試みは、コミュニティづくりに効果をあげ、2団体より助成を受けて「ネットワーク」から13団体のボランティア団体へテント等の機材一式を貸し出すプロジェクトを実施。1年後には月平均40回程度実施される活動に発展しました。

(前半終了)


(印刷用)