公益財団法人京都地域創造基金「カンパイチャリティキャンペーン」　【寄付付き商品（６）】

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コミュニティファンドの復興支援【寄付付き商品事例（６）】

団体名：公益財団法人京都地域創造基金 http://www.plus-social.com/index.html
プロジェクト名：カンパイチャリティ　http://www.kanpai-charity.com/
カンパイチャリティキャンペーン　第2弾　震災復興チャレンジ
（実施期間：2011年8月18日～9月30日）

「あなたのカンパイが、被災地／被災者に元気を届ける。京都のまちも元気になる。」

カンパイチャリティは、京都地域創造基金が京都の飲食店とともに実施した京都発・日本初の地域展開型チャリティキャンペーン。参加店舗が提供する「カンパイチャリティメニュー」を注文すると販売額の一部が寄付にまわるという仕組みだ。8月から開催された第2弾キャンペーンの寄付は、東日本大震災の復興支援等に取り組む団体や事業に届けられた。
今回は、企業ではなく非営利団体が主体となってＣＲＭを社会に広めた事例として、カンパイチャリティキャンペーンについて、京都地域創造基金の戸田幸典さん（専務理事・事務局長）と村井琢哉さんにお話を伺った。

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飲食店と協力してお酒を飲む場でチャリティを呼びかけるという、このユニークな取り組みを始めるきっかけは何だったのだろう。
「当基金理事会の中で、チャリティプログラム企画を考えていたときに、一人の理事が提案したのがきっかけです。乾杯する場面では、みんな笑顔になりますよね。「ありがとう」「おめでとう」と言って乾杯する時に、地域にもその気持ちを伝えようというのがコンセプトです。また、既存メニューから、寄付付き商品とするメニューを決めていただくので、飲食店にとっても負担が少なく導入しやすい仕組みだと考えました。」（戸田さん）

寄付額や寄付付き商品にするメニューは飲食店側の裁量で設定する。例えば、注文が入るほど店の利益も寄付も増えるよう、利益率の高いメニューを対象商品にし、店舗毎に売り上げを競う会社もあった。額の設定についても、通常価格に寄付を含めた店、寄付額を通常価格に上乗せする店等、各店が工夫している。

このチャリティを始めるにあたり、協力依頼を呼びかけた飲食店の約9割が参加してくれたという。
京都には、“京都を盛り上げたい”、“何か社会貢献をしたい”という思いを持つ飲食店オーナーと関連業者の有志が立ち上げた団体がある。その団体を通じて加盟店に声をかけたり、日頃から社会貢献活動に関心が高い店や、スタッフやＮＰＯセンターなどからの周辺情報を得て、関心を持ってくれそうな店に絞り込んで個別にアプローチしていった。

店を巻き込むときに留意したこともある。全国規模のチェーン店にはあえて声をかけず、地場の店に声掛けをした。

専務理事・戸田幸典さん（右）と村井琢哉さん

「この取り組みでは、『地域経済との接合』を重視しています。地域経済とＮＰＯとがつながり、地域を良くするためのお金の循環が重なり合う仕組みを作ることで、地域内の資金循環を進めたいと考えています。」（戸田さん）

『地域経済との接合』というキーワードは、地元企業の共感も生んだ。また、地域内の資金循環が見えてくると、消費者も自分たちの支払うお金がどのように使われるかを意識し、店選びの選択肢の一つとして考えるきっかけにもなる。
大企業であれば独自に寄付を集める仕組みも作りやすい。しかし、そうして集まった寄付は大きなNPO団体に流れてしまい、支援結果が見えにくいこともある。京都地域創造基金では、地域の中の団体に寄付を届け、寄付者が成果を見守っていくことが重要だと考えている。

そして、このカンパイチャリティのもう一つのポイントは、“さりげなく、日常的に寄付できる”プログラムであることだ。
「元々関心のある人は、自分で寄付プログラムを探すなど行動を起こすことができますが、寄付しよう！と思わなくても寄付できるチャンネルが普段の生活にあることが大事だと思っています。さりげなく寄付できる仕組みの一つが、カンパイチャリティです。また、寄付をした後は寄付先団体の活動がどうなったのか継続的に関心を持ってもらえるよう、団体の活動報告やお礼のメッセージをお店に貼ってもらっています」（戸田さん）

このキャンペーンは、客だけでなく、お店で働く従業員が社会貢献に関心を持つ契機ともなっている。自分たちが頑張って出した売り上げが、どのような団体に寄付されるのか考えることで、社会課題への気づきやまなざしが生まれるきっかけになる。

また、メニューを見た客から、従業員が質問を受け、支援先NPOの活動内容を説明する機会も出てくる。これは、NPO自らが活動内容を伝えなくとも、NPOの活動内容を伝える「道具」をいろんな人が持つことができたということ。

戸田さんは、お店で働く人も「ファンドレイザーの一人」と言う。ビール一杯につき20円の寄付になるのなら、そのビールを売った定員は立派なファンドレイザーだ。このような仕組みをどんどん増やすことで、「さりげなく寄付する人も、さりげなくファンドレイザーになる人も生まれていく」（戸田さん）。

カンパイチャリティの寄付先は、京都地域創造基金が行う事業指定寄付というプログラムの中の団体から選ばれる。

第1弾では、飲食店の近くに事務所のある団体や、飲食店が活動内容を以前から知っている団体への寄付が多かった。一方、しっかり使ってもらえるのであれば、どこのNPOに寄付してもよいという考えの飲食店もあった。これは、団体の活動に関心がないわけではなく、きちんと活動している団体であればどこでも支援したいという前向きな姿勢だ。

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カンパイチャリティ第1弾は、歓送迎会の時期に合わせて2011年3月4日～4月17日に開催された。チャリティ開始から一週間後に東日本大震災が発生。
「地元ＮＰＯへのチャリティも大事だが復興支援も必要ではないか」「第2弾をやろう」と、飲食店側からも声が上がった。

震災発生後すぐに、京都地域創造基金は自団体のミッション（＝市民の想いが実現する豊かな地域社会の創造のため、寄付を地域のＮＰＯにつないでいくこと）のもと、被災地に対して自分たちは何ができるか考え、必要なところに適切に寄付を届けることにした。そして、3月23日には「被災者とＮＰＯをつないで支える合同プロジェクト（つなプロ）」「災害ボランティア支援基金」という二つの基金を設置し、被災地での緊急・復興支援に対し、寄付金を集めるという形で後方支援した。

そして、カンパイチャリティ協力飲食店からの声も受け、カンパイチャリティ第2弾を夏のビアガーデンシーズンに実施することに決まった。
第2弾の企画にあたり、復興支援をテーマに支援先となる団体・事業を4月後半から公募した。その結果、4団体からエントリーがあった。

そして、第2弾は復興支援チャレンジとし、「被災者とＮＰＯをつないで支える合同プロジェクト（つなプロ）」「災害ボランティア支援基金」の2つの基金と、（特活）きょうとNPOセンターの実施する「東日本大震災の支援活動に取り組む人を支えるプロジェクト」、（特活）アートNPOリンクの実施する「アートNPO エイド　表現の回復に向けて」、SWTJの実施する「被災地の子どもとお年寄りに小さなお祭りを届けるプロジェクト」、（特活）JIPPOの実施する「原発事故の被災者生活再建と子どもたちの日常を取り戻す事業」の4事業が寄付先となった。

このカンパイチャリティを通じて、飲食店側の反応はどうだったのだろう。

「従業員の方々が、このチャリティのことを真剣に考えてくれていると感じました。第1弾協力店で、第2弾に参加しなかった飲食店もありましたが、その店からは『自分たちの、関わりのあるNPOが復興支援をしているので、そこに寄付をしたいと、従業員の中で話し合った上で、カンパイチャリティではない方法で寄付することを選びました』と聞いています。今までだったら、このように話し合う機会はほとんど無かったと思います」（村井さん）

カンパイチャリティ第2弾のチラシ

第2弾の行われた8月は、店頭への募金箱設置や、従業員から支援団体への寄付等、飲食店でも既に何らかのチャリティ活動を行った時期だった。それでも、第2弾には約50店舗（※）の飲食店が参加した。

※亀岡市内の店舗は、「かめおかfood de　チャリティキャンペーン」として参加。参加店舗はカンパイチャリティのWEBでも紹介している。

「店舗でNPOに寄付を受け渡すお店もありました。各店舗がどれだけ寄付をしたか意識させるお店もあったようです。しかし、これはノルマとしてではなく、みんなで盛り上げていこうという雰囲気の中で行われているものです。人（従業員）を育てるプロセスの一環として、丁寧にこのキャンペーンに取り組んでくださっていると感じました」（村井さん）

また、店側だけでなく、実際に店頭に寄付を受け取りに行ったNPOにも気づきが生まれているという。自分たちのために寄付を集めてくれたファンドレイザーでもある従業員の方々に会い、自分たちの手元に届いた寄付の重みや想いを感じることができる。
また、カンパイチャリティのレポートをNPO自身が書くように促した。「支援金がどのように役に立ったのかきちんと報告すれば次も寄付先に選んでもらえる」、そう感じることも重要であり、ファンドレイザーとNPOとのコミュニケーションを少しずつ積み重ねていくことで。

このカンパイチャリティを通じて、京都地域創造基金が得たものとは。
「新しいファンドレイザーとつながり、寄付の新しいチャンネルを見つけたことです。社会をよくしていくのはＮＰＯだけではありません。多様な人がつながる場をつくることで、より良い社会づくりができるのではないでしょうか」（戸田さん）

カンパイチャリティという仕組みがあることで、多様な人がそれぞれの持ち場でファンドレイザーとして動くことができる。自分たちの活動エリア以外で支援金を集めるのが難しいNPOにとっては、京都府内の飲食店が自分たちの代わりに寄付を集めてくれる仕組みであり、企業にとっては、寄付など社会貢献に取り組むためのきっかけとしてのツールである。

今後のカンパイチャリティの予定を伺った。
「将来的には、1,000店舗で同時開催したいと考えています。また、地域連携も考えています。他地域との同時開催、リレー方式等のキャンペーンを行い、メディアにアプローチしていきたいです。飲食店の情報を扱っているメディアとも連携を強くすることでコスト削減、キャンペーンへの注目を高めていきたいです」（戸田さん）

東日本大震災を機に、企業の社会的責任や社会貢献に関心を持ち、実際に本業を通じて復興支援に携わった企業も多い。戸田さんは、今後も企業は社会への関心をなくさずに、企業活動をしている地域や足元の課題にも目を向けてほしいと話す。

地元の力を高めていくことも社会づくりにとっては大事なこと。みんなが笑顔で市民活動を支えていく、カンパイチャリティの今後の展開も注目だ。

（取材後記）
味わい、飲み語らうときは、誰もがハッピーになれる瞬間だ。消費者や生活者としての場面で、社会課題への関心を呼び起こすこのキャンペーンを取材して、寄付事業の新しい時代が到来していることを感じた。老舗店舗や食通が多い京都ならではの今後の展開に期待したい。（鈴木暁子）

気負うことのない、さりげない寄付でありながら、カンパイチャリティによってもたらされた気づきは、「市民活動を支えるのは市民社会」という京都地域創造基金の使命を実現する大きな一歩となっている。他地域との同時開催など新しい企画によって、京都地域創造基金の取り組みが、地域の垣根を越えて展開されていくのが楽しみだ。（須磨珠樹）

取材日：2012年2 月16日
取材：鈴木暁子、須磨珠樹
文責：一般財団法人ダイバーシティ研究所

＊被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト（つなプロ）
http://www.hnpo.comsapo.net/portal/tsuna-pro/portal.index

＊（特活）きょうとNPOセンター　 http://www.npo-net.or.jp/center/

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＊SWTJ -SOLIDARITY WITH TOHOKU, JAPAN-　　http://www.swtjp.org/index.html

＊（特活）JIPPO　 http://jippo.or.jp/

（印刷用）