東日本大震災被災地応援プロジェクト!
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企業による復興支援【寄付付き商品事例(4)】

会社名: 株式会社不二家  http://www.fujiya-peko.co.jp/
商品名: カントリーマアムアソート東北応援
http://www.fujiya-peko.co.jp/pdf/press20120105_2.pdf


「カントリーマアム」といえば、そのまま食べてもよし。電子レンジで温めて食べてもよし。一つ一つ、小袋に入ったクッキーは配りやすく、さまざまなシーンで活躍しているお菓子の一つだ。そのカントリーマアムブランドから、震災復興への寄付付き商品「カントリーマアムアソート東北応援」が発売された。発売までの道のりについて、CSR推進部の古屋忍さんと、土田愛さんに、聞いた。

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カントリーマアムアソート東北応援

被災地支援を目的につくられた新商品「カントリーマアムアソート東北応援」は、期間限定で3月末日まで出荷されている。売上の一部(1箱につき3円)は、東日本大震災復興支援として、岩手で被災地支援活動を行っている「公益財団法人国際開発救援財団」(FIDR「ファイダー」)(*1)に寄付される。

「FIDRは、震災により甚大な被害を受け、支援が比較的行き届きにくい岩手県沿岸部を中心に支援活動を行っているNGO団体です。震災発生直後の避難所への食糧支援を皮切りに、仮設住宅への家電製品提供、また仮設保育園の建設支援などを行っています。」と、古屋さんは話す。

FIDRとの接点

 FIDRと不二家の接点は、東日本大震災が発生した直後にさかのぼる。不二家の洋菓子店やレストランでは、「日本を元気に!ペコちゃんと応援!」(*2)募金を開始した。また、一部の不二家洋菓子店舗において、「ヤマザキ『ラブ・ローフ』募金」(*3)も実施。寄付先に、FIDRと、「特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン」を選んだ。これら2団体は、確かな活動を行っている支援団体として、不二家の親会社である「山崎製パン株式会社」から紹介してもらった。

「全国に工場をもつ山崎製パンは、これまでも天災などがあると、いち早く支援活動をしてきました。FIDR(*3)は山崎製パンの創業者の寄付をもとにした団体なのですが、当社は山崎製パンと親会社子会社の関係にありながら、私達は、実は、FIDRについてよく知りませんでした。3月11日の震災後、不二家として何ができるか考えたとき、最初は義援金が頭に浮かび、「日本赤十字社」を寄付先にしようかと検討しました。しかし、赤十字に寄付した場合、義援金の使い方は一任することになります。ならば、団体の活動、支援先について把握したうえで寄付ができるFIDRとワールド・ビジョン・ジャパンに協力しようという結論に至りました」(古屋さん)

こうした経緯を経て、昨年の4月と5月に行われた募金は、上記団体に寄付した。

このときの支援がきかっけで、古屋さんをはじめとする不二家社員はFIDRと交流を開始。活動への理解が深まり、「カントリーマアムアソート東北応援」の寄付先に選ばれたといえる。

初めての寄付付き商品

不二家が初めての寄付付き商品に選んだのは、1984年の発売開始以来、ロングセラーを続けているカントリーマアム。今ではシリーズで年間130億円を売り上げる不二家の人気ナンバーワン商品だ。「一箱につき3円を寄付する」というやり方には、購入者に支援への参加意識をもってもらえたらという思いがこめられている。

通常、菓子部門の新商品は、発売の半年から1年前に商品企画が始まる。「カントリーマアムアソート東北応援」は、去年(2011年)の8月から、企画が始まった。震災復興の見通しが見えない状況から、復興支援のニーズを感じていた企画担当者は、「なんとかして、震災発生から1年が経過する2012年の初めまでには発売したい」と考え、今年1月の発売に間に合わせたそうだ。

人気のフレーバー「バニラ」と「ココア」に、バレンタインデーを意識して加えたという「ジャンドゥヤ」(チョコレートに、へーゼルナッツとアーモンド、チョコチップを練りこんだもの)の3種類の詰め合わせにした。企画段階では、東北地方の郷土菓子「ずんだもち」などのフレーバーも考えられたが、誰にとっても好き嫌いなく、好まれる味のほうが買っていただけるだろうと、この3フレーバーに決まったそうだ。

パッケージに印刷されている「東北を応援しよう!」のキャッチコピーは、いくとおりもの案の中からシンプルで、一目で理解してもらえる点から選んだ。

被災地を訪問して

FIDRが仮設園舎建設に関わった保育所には、不二家から「ペコちゃんが行く!不二家キャラバン隊」が訪問した。

「ペコちゃんが行く!キャラバン隊」とは、不二家の創業100周年(2010年)限定の取組みとして実施されたのが始まりだった。全国の児童施設に、ペコちゃんのイラストが描かれたキャラバンカーでペコちゃんが訪問し、子どもたちと一緒にゲームなどをして遊ぶというもの。好評により、2011年も継続して行っていた矢先、震災が発生。自粛ムードが広がる中、一時休止していた。

説明: fujiya04
「ペコちゃんが行く!不二家キャラバン隊」岩手県の保育所にて

キャラバン隊が動けない間、社員で何かできないかと考え、被災地の不二家洋菓子店や小学校、避難所をペコちゃんが訪問し、楽しい場にすることに協力したいと考えた。4月に訪問したいわき市の不二家いわき岡小名店では、「震災以来一ヶ月、笑顔を見せたことがないというお子さんが、ペコちゃんの訪問で久々に笑ったと、涙を流しながらあるお母さんが教えてくれました」と古屋さんは振り返る。「落ち込んでいるお子さんを元気づけることができて、現地に行っている我々もすごく感動しました」(古屋さん)

1950年に誕生したペコちゃんは、幅広い世代から親しみをもたれている。ペコちゃんの訪問に顔がほころぶのは、子どもだけではない。大人も握手を求めてくるそうだ。

 20110519訪問(宮城県)不二家白萩町店
「ペコちゃん被災地訪問」不二家白萩店(宮城県)

10月になると、全国の児童施設を訪問する従来の不二家キャラバン隊活動も再開。再開当初は訪問地を被災地に定め、三ヶ月で被災三県の26ヶ所の保育園などを訪問した。

こうした活動については、「WEEKLY Sweeeet!!」というイントラネットの社内報に掲載される。「東北の人を支援するつもりで参加したが、自分にとって得がたい経験になった」という声が参加した社員からあったという。なかには、阪神淡路大震災のときに支援をしてもらった恩返しがしたいと、東北の復興支援活動に志願した社員もいたそうだ。

アドバイス

最後に、これまでの支援活動の経験から、企業が寄付を行うにあたってのアドバイスをもらった。

企業に支援を求める団体について古屋さんは、「その団体の活動を実際に見て、協力したいと感じる何かがあるか、(支援する側は)確かめることが重要かと」と指摘する。団体についての十分な情報がない段階では、会社としては身動きがとれないのが正直なところだそうだ。

土田さんからは、「寄付付き商品は買っていただけないと支援が始まらないので、一番人気のある商品でブランドを活かして実施するのがよいと思います」とのコメントをもらった。

「カントリーマアムアソート東北応援」の販売場所については、不二家お客様サービス室 0120 - 047228 まで。

 

(*1) 山崎製パン(株)の創業者の寄付を主な基本財産として発足した国際協力団体。不二家は法人賛助会員になっている。

(*2) 「日本を元気に!ペコちゃんと応援!」とは、2011年4月29日〜5月8日の期間中、不二家洋菓子店とレストランにおいて、対象商品を1個お買い上げにつき、不二家が100円を東日本大震災募金に寄付した取り組みのこと。

(*3) 「ヤマザキ『ラブ・ローフ』募金」とは、山崎製パン株式会社と株式会社デイリーヤマザキが協賛している募金活動。4月29日〜5月8日まで、一部の不二家洋菓子店舗に募金箱を設置。一旦募金を寄付した後、再び9月末まで震災復興支援のため同募金箱を設置。

 

(取材後記)
我が家で食べている山崎製パンの食パンが、1斤につき1円をFIDRに寄付する寄付付き商品だと知ったのは、購入後、袋を開けたときだった。であれば同じように、不二家の「カントリーマアムアソート東北応援」が寄付つきだとは知らずに購入する人もいるはず。震災から一年を迎えるこの時期に、手にした商品に「復興支援」のメッセージを見つけ、被災地に思いをはせる人が増えればと思う。また、被災地で高齢者までもがペコちゃんの訪問を喜び、握手を求めてくるという話を聞き、「キャラクター」のもつ力について考えさせられた。金銭的、物的支援はリソースがあれば可能だが、被災地に笑顔を届けることは簡単ではない。1950年生まれのペコちゃんだからこそ、世代を超えて人を笑顔にできるのだろう。(奥田みのり)

取材の冒頭、「当社から直接支援できる金額は大きくないので、寄付付き商品で協力できればと考えました」と控えめにおっしゃったが、一番人気のブランド商品に寄付をつけることに、不二家の本気と誇りを感じた。週刊で発行している「WEEKLY Sweeeet!!」で社内にタイムリーに状況を共有していることも、持続的に支援に関わる雰囲気の醸成に大きく貢献しているという。ストレートな「東北を応援しよう!」のメッセージと同様に社員ひとりひとりの内側からのストレートな被災地への思いを感じる商品であった。(前川典子)

取材日:2012年2月8日
取材:奥田みのり(フリーライター)
文責:一般財団法人ダイバーシティ研究所

 

* CSR報告書「東日本大震災に関するお知らせ」PDF
http://www.fujiya-peko.co.jp/company/csr/pdf/csr_report_2011_p9_10.pdf

* 公益財団法人国際開発救援財団(FIDR)
http://www.fidr.or.jp/

*特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン
http://www.worldvision.jp/


(印刷用)