東京証券取引所【復興・自立と支援のマッチング（１）】

東日本大震災被災地応援プロジェクト！	（C）一般財団法人　ダイバーシティ研究所
ダイバーシティに配慮した避難所・まちづくり・復興計画を

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	企業による復興支援
	寄付で応援する商品
	├味の素冷凍食品株式会社　「東北に元気を！明日を耕すプロジェクト」　　ギョーザ、おつまみギョーザ、他 ├公益財団法人京都地域創造基金　　「カンパイチャリティキャンペーン」 ├有限会社クック＆ダイン　　「南部鉄器・手作り両手鍋」他 ├株式会社不二家　　「カントリーマアムアソート東北応援」 ├SC. Cosmetics株式会社　　スチームクリーム「LOVE FOR JAPAN」 ├グンゼ株式会社「快適工房」他 └株式会社ラッシュジャパン　　ボディクリーム「チャリティポット」他
	被災者の「生きがい」仕事づくり
	├株式会社福市　「東北支援プロジェクトEAST LOOP」 └ソーケングループ　「癒し一番　間伐材　ひのき」
	復興・自立と支援のマッチング
	├株式会社ベネッセコーポレーション　　「進研ゼミ高校講座　努力賞ポイント募金」 └株式会社東京証券取引所　　「震災復興支援グッズ」

企業の震災復興支援事例　【復興・自立と支援のマッチング（１）】

会社名：株式会社東京証券取引所グループ　http://www.tse.or.jp/
プロジェクト名：震災復興支援グッズの販売
東京証券取引所オリジナル・グッズ：
http://www.tse.or.jp/about/arrows/goods.html

「オリジナルグッズ」を作成している企業は多いだろう。取引先に持参したり、セミナーで配布したり、来店記念にプレゼントしたり。活用の場面は様々だが、ロゴと社名が入ったちょっとした品は企業をPRするものとして一般的である。
東京証券取引所も、従来からオリジナルグッズを扱っていた企業の一つだ。言わずと知れた、日本を代表する証券取引所。小中学生の修学旅行・社会科見学の訪問先としても人気で、その他一般の見学も含めると訪問者は年間6万人に上る。オリジナルグッズは訪問者向けに販売されているほか、主催セミナー等でも配布しているそうだ。
2011年11月、同社のラインアップに新たな商品が加わった。その特徴は、東日本大震災復興支援につながることだ。

「経済活動を応援しています」

2011年3月の震災後、同社では基本方針として「経営に打撃を受けた上場会社及び上場候補会社の上場廃止や上場審査において柔軟な対応を実施」すると掲げ対応してきた。また、義援金の寄付や物資提供を行ったほか、ETF（Exchange Traded Fund）・ETN（Exchange Traded Note）の売買手数料相当額全額を義援金とするなど、一通りの支援を行ってきている。
同社CSR推進部が次に着目したのが、「見学スペースで販売するオリジナルグッズ」であった。復興支援につながる商品を取り扱えないかと考えたのだ。ロゴ入りのオリジナルグッズにはこんな文章も印刷されている。
「東証(TSE) は、被災地の復興・自立に向けて芽吹いた小さな経済活動を応援しています。」
日本の経済を支える東京証券取引所。だからこそ、商品を取引することや経済活動を通じて応援したいという同社の意思表明だ。

被災地につながる、3つの商品

2012年1月10日現在の取扱商品は、3つ。
１．特製ストラップ
クリーナーつきのストラップ。石巻復興支援ネットワーク（宮城県石巻市）が製作したものだ。
同ネットワークは、従来より石巻市で活動していた「環境と子どもを考える会」が母体となっている組織。「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト（つなプロ）」のメンバーと、2011年5月に合同で立ち上げた。子ども向けのサポートや仮設住宅でのコミュニティ形成支援、生きがい仕事づくり等の事業を行っている。事業内容は同ネットワークのウェブサイト上にアップされているスライドに詳しいのでぜひ見てほしい。
ここでは、活動への寄付を集める手段としてグッズを製作している。その一つがクリーナー付きストラップ。お母さんの手描きキャラクター「やっぺすちゃん」がシンボルとなっている（「やっぺす」とは石巻の方言で「一緒にやりましょう」の意）。
東証バージョンの制作にあたっては、地元の印刷会社にロゴシールの印刷を依頼した。この印刷会社も被災しており、仮設事務所で事業を再開しているそうだ。また、シール貼り付けの作業は仮設住宅にお住まいの女性に依頼。少ないながらも内職仕事となった。
なお、購入するとついている手編みの「ミサンガ」は、地元の中学生グループ「WMI（We make Ishinomaki）」による御礼の品だ。支援してくれる人にお礼をしたい！という気持ちで一つ一つ編んだものである。

２．福幸だるま
二つ目は、「福幸だるま」。まどか荒浜（宮城県仙台市）が製作している。
まどか荒浜は、知的障がいがある方の就労支援事業施設である。従来、仙台市若林区で和紙や和菓子を作り販売していたのだが、施設・店舗が津波で全壊。現在は、仙台市太白区にある「仙台ワークキャンパス」を間借りしている。福幸だるまは「まゆ玉」を使った起き上がりこぼしだ。和紙を扱っていた技術を生かし、きれいに着色したまゆ玉に和紙を切り抜いた目鼻を付けている。商品には「廃墟（がれき）の中からフェニックスのように立ち上がり、人生を切り拓く気概を奮い起こせ！と願いをこめて一つ一つ丁寧に作りました」と書かれている。東証バージョンはだるまのおなかに「TSE」の文字。またパッケージの裏面には東証ロゴをつけた。
実はこちらの施設、震災後工賃が激減している。しかしながら職員・利用者一丸となった努力の結果、売上増により徐々に回復。12月にはボーナスを出すこともできたそうだ。東証でのオリジナル商品取り扱いもその一助となっている。

なお、本商品の取り扱いは「ミンナDEカオウヤプロジェクト」（被災エリアの授産品を全国・都市部で販売することで、被災した障がい者福祉施設の経営・障がい者の収入を支えるプロジェクト）経由で実現している。

3．復興カレンダー
直近では、カレンダーの取り扱いも開始している。東北地方の障がい者施設で印刷されたものだ。障がいがある方が書いた絵や授産品の写真が載っている。

同社では以降も各地の商品を取り扱っていく予定としている。

“オリジナルグッズの発注”という支援のかたち
2011年11月、同社CSR推進部は石巻復興支援ネットワーク、まどか荒浜を訪問した。それぞれの団体の方とお話しするとともに、活動や制作の現場・被災の状況を目にしている。再確認したのは、同社がオリジナルグッズを発注することが、地域の復興や被災した方の生活向上につながることだ。見学者向けの販売スペースには、現場で撮影してきた写真が展示されている。ぜひ見学・購入に訪れていただきたい。

（編集後記）
今回、ダイバーシティ研究所は各団体とのコーディネートを担当させていただいた。あらためて、“オリジナルグッズの発注”という支援の意味合いを、CSRの文脈から考えてみたい。CSR/SRを進めるうえで手引きとなる「ISO26000」というガイダンス規格がある。このなかで7つ掲げられている大きなテーマの一つが、「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」だ。「コミュニティ参画及びコミュニティの発展」の章には復興支援をするうえで参照としたい箇所が複数あるが、今回は「富及び所得の創出」を取り上げたい。以下のことが書かれている。
組織は、地域の人々、集団及び組織を自らの活動またはバリューチェーンに組み入れることを通じ、コミュニティの発展において積極的な役割を果たすことができる
今回東証が実施した「オリジナルグッズの発注を通じて被災地の復興を支援すること」は、これに類すると言ってよいだろう。昨今花盛りのコーズリレーテッドマーケティングとは少し視点が違う、比較的着手しやすい支援のかたちとして参考にしたい事例である。（清水圭子）

作成：2012年1月10日
執筆：清水圭子
文責：一般財団法人ダイバーシティ研究所

＜本文中の被災地支援団体の情報はこちら＞
・石巻復興支援ネットワーク：http://yappesu.jimdo.com/
・WMI：http://misanga-wmi.org/
・まどか荒浜：http://www.madoka-arahama.or.jp/
・ミンナDEカオウヤプロジェクト：http://www.insweb.jp/report/minnaDE

（印刷用）