東日本大震災被災地応援プロジェクト!
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復興・自立と支援のマッチング  
   

企業の震災復興支援事例 【復興・自立と支援のマッチング(2)】

会社名: 株式会社ベネッセコーポレーション  http://www.benesse.co.jp/
商品名: 進研ゼミ高校講座 努力賞ポイント募金 http://www.benesse.co.jp/mirai/bokin/

※努力賞5ポイントを1口(1口で83円の募金)とし、努力賞募金を通じて、被災地の子どもやお年寄りなどを支援。

小学生から高校生までの通信教育講座「進研ゼミ」を運営するベネッセコーポレーションでは、「進研ゼミ」の添削課題などを提出すると付与される「努力賞ポイント」を、被災地に募金ができるようにした。

この取り組みは、会員である高校生の声を受けて始まったという。既存のシステムを活用し、子どもも主体的に復興支援に取り組むことができる「努力賞ポイント募金」について、教育事業本部教育事業本部室渉外担当部長 牧田和久さんとブランド戦略課渉外担当課長 安東寿士さんにお話を伺った。

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311後の緊急支援

東日本大震災発生後、ベネッセグループ全体では約1億8,900万円の義援金を日本赤十字社などに拠出した。また、日本経団連を経由して文具(鉛筆2,000本等)や学用品セット(ドリル、文具)を被災地小中学校に9,000セットを届けるなど物資支援も行ってきた。他にも、大学事業部とつながりのあった大学教員からの依頼を受け、3月中旬には国際協力NGO・セーブ・ザ・チルドレンへ消毒液の提供を行うなど、これまで構築された関係を通じた支援もしてきたという。

子ども向け教育が本業の一つである、株式会社ベネッセコーポレーション。
緊急時の義援金や物資支援以外の、お客様への対応と情報提供の支援は4月から「こどもの未来応援プロジェクト」として、教育現場と各家庭に対して生活や学習支援活動を始動させた。

被災地の1万3,000人を対象に、継続的な受講や購読が困難になった子どもたちのため、2011年3月には、同年4月から9月までの通信教育講座「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」や雑誌を無料にする特別支援制度を迅速に設け、地元新聞を通じて周知した。

また、会員である受講生や購読者だけでなく、被災地の学校にも支援を行っている。
まずは、通常、有償配布をしている小学生の漢字ドリルをWEBから無料ダウンロードできるようにし、その結果、7万5,000件に上るアクセスがあったという。また、計算プリントも無償配布を決め、被災地の小中学校2,400校に対して案内をしていったという。
ホームページからのダウンロードだけでなく、被災地の学校210校に漢字ドリル6万冊を送り届けた。この210校には、被害の大きかった岩手・宮城・福島の3県に加え、青森県と茨城県の学校も含まれている。この理由について安東さんは「被災の大きい地域に目が行きがちですが、可能な範囲で優劣をつけずに必要としているところに支援したいと考えました。」と話す。

必要な人に必要な情報を

物資支援だけでなく、「情報」を届ける活動もしてきた。

ベネッセ2
「非常時の子育て情報」 http://care.shimajiro.co.jp/

妊婦・赤ちゃんを守るための災害対策知識ページ「非常時の子育て情報」サイトは、本当に信頼できる情報を届けるため、複数の専門家の監修のもと、子どもの年齢別に、不安を抱える母親向けのケアをまとめたものだ。こちらは冊子にまとめ、ベネッセコーポレーションのキャラクター・しまじろうが被災地を慰問した際に、支援物資の中の一つとして提供した。また、ダウンロードが可能なようにPDF化もしている。

この「非常時の子育て情報」は、twitter(アカウント名:@shimajiro_care)でも情報発信を行ったことで、非常に速いスピードで情報が拡散していき、多くの方に活用いただけたという。

また、こどもチャレンジ事業部では、会員向けの情報発信ツールとしてFacebookの活用を始めていた。立ち上げたばかりのFacebookページを震災の情報発信に使い、「避難所での遊び」情報を発信するなど、教育、生活(育児)など多方面に取り組む企業の強みを活かした緊急支援を行っていった。

ベネッセ募金の設立

2011年3月24日から、被災者支援のために「ベネッセ募金」の募金が始まった。「赤ちゃんからお年寄りまですべての方々の『よく生きる』を支援する」ことに使命感を持つベネッセグループができることとして、社員やお客様の声に後押しされて設立された募金だ。
集められた募金は、外部からの有識者を交えたアドバイザリーボードによって選定された支援団体に寄付され、これまでには、被災した子ども、高齢者、妊産婦・乳幼児を支援している6団体が寄付先に選定されている。
この「ベネッセ募金」の支援団体の選定基準は次の3つ。

  1. 団体の設立趣旨や理念がベネッセグループの理念と重なっているか
  2. 物資のみの支援ではなく、「人」を軸とした活動をしているか
  3. 支援活動内容をきちんと報告できる団体であるか

これらを重視したのは、「お預かりしている募金である以上、支援団体から報告を受け、またそれを募金者に報告することが重要」という思いからだ。

これまでに寄付を受けたのは、「公益社団法人日本ユネスコ協会連盟」「特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン」「特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン」「公益財団法人ジョイセフ」「公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」「特定非営利活動法人ADRA JAPON」の6団体。
例えば、グッドネーバーズ・ジャパンは、臨床心理士を講師として招き、保護者や幼稚園、保育園の先生を対象とした、被災児童のストレスやその対応策についてのワークショップを定期的に開催している。ジョイセフは、出産された産婦さん(り災証明を有する方)に5万円を支給する活動を行った。
「ベネッセ募金」には、2012年1月末までに約8800万円の募金が集まり、2011年6月と2012年2月の二度に分け、支援団体に寄付することができた。

努力賞ポイント募金

ベネッセコーポレーションでは、通信教育講座「進研ゼミ」というサービスを行っている。その「進研ゼミ高校講座」の会員である高校生からも「被災地で何かしたい」という声が寄せられた。
進研ゼミ編集部では、この声を受けて高校生が参加できる復興支援について考えていったという。
「今の目の前の勉強を頑張ることで、社会に出たときに必要なことに備えることも大事なこと」、「今の勉強を頑張りながら、それが被災地の役に立つことにつながれば」、そんな意見を出し合い、最終的にできたのが「努力賞ポイント募金」だった。
進研ゼミの課題を出すことで得られる「努力賞ポイント」を、「被災地支援コース」へ申し込むことで被災地への支援活動のための募金に充当される仕組みだ。受講生が勉強を頑張ることが被災地支援につながる、子どもたちが自分自身の意志で無理のない範囲で寄付に参加できるユニークな取り組みだ。

この「努力賞ポイント募金」の募集受付は2011年4月1日からとした。例年、前学年までに貯めたポイントを交換することが多いのが4月であり、その時期に合わせて募集をスタートさせた。企画決定から募集まで残された時間は3週間もない中、システム変更などを進め、無事4月1日から受け付けを開始することができた。

ベネッセ
牧田和久さん(左)と安東寿士さん(右)

2012年2月末現在で、24,236口の募金があった(1口83円換算)。約8,000人の会員が参加し、1人あたり平均3口を募金したという。結果、金額にして200万円強の募金が集まった。
「これは予想以上の集まりでした。この結果を受け、社員も子どもたちが被災地に関心を寄せて募金に参加してくれたことを嬉しく思っています。また、この活動を通じて、会社として継続的な被災地支援をしていきたいという思いを強くしました」(牧田さん)。

受講者の保護者からも「良い企画だ」「ぜひ継続してほしい」という声をいただくことができた。そして、この2012年4月1日からは、「努力賞ポイント募金」は高校講座だけでなく、小学・中学講座にも広がることとなった。現在の進研ゼミ会員は全国に400万人いる。その400万人の会員と被災地の子どもたちの思いをつなげていく活動になったのだ。

この企画を通じて得たものは大きい。
「全国の会員の方々とつながっていることを再認識し、当社のビジネスの形について改めて考える契機となりました。また、当社だからこそ、全国の子どもと被災地の子どもとの気持ちをつなげることができるのだと感じました」。(牧田さん)

また、4月からは「努力賞ポイント募金」を拡大するため、新たな支援先として、石巻市内に公園をつくる活動へ支援する予定だ。お客様に「この募金を寄付先に選んで良かった」、そう思っていただくことが継続的支援の一歩。そのためにも、各事業から集まった募金は、それぞれに分かりやすい事業に拠出し、報告していくことが重要だと考えている。

被災地を訪問して

実際に被災地にも足を運ばれたお二人。被災地に行ったことで見えてきたことも多い。

「現場のニーズは変化していくことがよく分かりました。その変化を受け止めないと支援は役立たない。当社の持つ強みと支援をどうつなげていくか考えさせられました。全国400万人の進研ゼミ会員のネットワークが当社の強みです。それをどう活かしていくか。公平に・すべての被災地に支援を続けることは限界がありますが、ご縁のできた地域・団体を通じて継続的に支援すること、企業は自社の接点のあるところに力を入れていくことも大事ではないかと感じました」(牧田さん)

また、安東さんはこう話す。
「現場の話がすべてだと感じました。“一部の地域への支援でよいのか”という声もありましたが、被災地全域への支援には時間がかかります。9月末、福島に行き、子どもを持つ母親、教育委員会、学校、メディアを訪問し、福島の被災された方が抱える悩みは深刻だと感じました。私が出会ったお母さんは、“福島に残ったことが、子どもにとって良かったのか、答えがでない。子どもの将来にとってマイナスにならないだろうか”と泣きながら話してくださいました。均等な支援、というのも大事ですが、まずは福島県内の被災された方に支援を届けなければと感じました」。

安東さんは、早速福島での支援活動に動いた。福島では除染のため、学校の花壇の花などが撤去されていた。そこで、11月末には学校に花を届けるため、福島市、田村市の全小中学校に花を届けた。福島市と田村市とは、ベネッセの行う学校へのパソコンサポート事業で、以前から関係があった自治体だ。また、現地の経済に寄与するため、東京から花を届けるのではなく、福島県内の花屋を通じて、プランター、花、土を用意したという。花が送られたことで、学校の雰囲気も明るくなったとの嬉しい報告もあった。

2012年3月4日には、福島で「ちびっこ大運動会」を実施した。原発の影響で、屋外で遊ぶことができない子どもたちに思い切り体を動かしてもらうため、福島県の民放テレビ4社と協働で開催した。イベントへの応募数は予想を超え、残念ながら抽選で入場者を絞ることにもなった。
当日は、子どもだけでなく、保護者も喜んで体を動かす場面が見られたという。「思い切り遊べることが嬉しい!」、そんな声をたくさん聞くことができた。

また、この大運動会には他の企業7社からも賛同があった。継続的な支援には、継続させるための仕組みも重要だ。今後も、企業一社で取り組むだけでなく、様々な企業とも協働で関わりながら継続的な支援に取り組んでいきたいという。

ベネッセ
ベネッセのWEBで公開されている震災記録マンガ
「みんながスーパーマンになった5日間」(六田登氏作)の
展示パネルの様子(多摩市東京本部にて)

 

会社としてだけでなく、社員が継続してボランティア参加する仕組みも作った。
2011年7月からは「ボランティア休暇」制度を新設し、福利厚生カフェテリアプランへのメニューに、保有ポイント枠内で補助金を支給する「ボランティア活動費用補助」も新設した。これは、ボランティア活動に要した交通費、宿泊費、必要な物品購入等を社員の年間保有ポイントの範囲で費用補助するものだ。
社員一人ひとりの被災地支援への思いを会社が応援するための施策として作られた。

復興支援をきっかけに

様々な形で、緊急支援・復興支援を続け、その中から生まれたのが最後に紹介する「ベネッセ通信教育奨学制度」だ。
復興支援活動を通じて、両親ともになくし、環境が大きく変わってしまった子どもたちが長期的に学びに向かえる機会を提供することが重要、との認識が社内で大きくなったという。そこで、震災や事故などにより両親を亡くした日本全国の子どもに無償で教材を届けるための奨学制度を新設した。
対象となるのは、今回の震災の被災者だけでなく全国にいる子どもたち。復興支援を通じながら、自社の強みと自社の取り組むべき課題を常に考えてきた、その結果生まれたものなのだろう。
復興支援を通じて、被災地のために活動していくことはもちろん重要なことだが、そこで出てきた気づきや思いを、その先につなげていくことも大事な活動だ。

 

(取材後記)
東日本大震災の復興支援活動に、自分たちも何かできないかと考えた子どもはきっと多いだろう。だが、お小遣いの寄付など、子どもにできることは限られている。「努力賞ポイント募金」は、被災地に心を寄せる子どもたちが無理なく参加できる仕組みであり、子どもを対象とした企業活動をしているベネッセならではの企画だ。「こどもの未来応援プロジェクト」では、子どもの思いを伝える取り組みもしている。ぜひサイトを見て子どもの思いを感じてほしい。(須磨珠樹)

取材日:2012年3 月13日
取材:須磨珠樹(東日本大震災復興支援担当)
文責:一般財団法人ダイバーシティ研究所


ベネッセ募金 http://bokin.benesse.co.jp/
こどもの未来応援プロジェクト http://www.benesse.co.jp/mirai/bokin/
ベネッセ「非常時の子育て情報」 http://care.shimajiro.co.jp/
「絆 きずなの大切さをキミに」 http://sho.benesse.ne.jp/s/land/ouen/
※震災記録マンガはこちらから読むことができます。

公益社団法人日本ユネスコ協会連盟 http://www.unesco.or.jp/
特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン http://www.worldvision.jp/
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン http://www.gnjp.org/
公益財団法人ジョイセフ http://www.joicfp.or.jp/jp/
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン  http://www.savechildren.or.jp/top/index.html
特定非営利活動法人ADRA JAPON http://www.adrajpn.org/



(印刷用)