グンゼ株式会社「快適工房」　【寄付付き商品（２）】

東日本大震災被災地応援プロジェクト！	（C）一般財団法人　ダイバーシティ研究所
ダイバーシティに配慮した避難所・まちづくり・復興計画を

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	企業による復興支援
	寄付で応援する商品
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	復興・自立と支援のマッチング
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企業による復興支援【寄付付き商品事例（２）】

会社名：　グンゼ株式会社　　http://www.gunze.co.jp/
商品名：　「快適工房（紳士）」、「快適工房PREMIUM(紳士・婦人)」
　　　　　　　「the GUNZE（紳士・婦人）」

グンゼ株式会社では、2011年8月21日から2012年3月末まで、「がんばろう！東北キャンペーン」として、対象商品の売上一枚につき1円の寄付を実施している。
震災発生直後には、緊急支援として総額2億円相当の物資提供も行ってきた。
これらの支援を実施するに当たり、どのようなスキームや方針で動かれてきたのか、コーポレートコミュニケーション部CSR推進室・室長の金森弘さんと同室・室員の吉川智美さんにお話を伺った。

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ダイバーシティ研究所（以下、Ｄ）：3月11日の震災発生後、緊急支援としてどのような動きをされたのでしょうか。

―　過去の災害発生時にも被災地への物資支援を行った経験があり、今回も医療品・食料品の次に必要になるのは肌着であると考えました。震災発生の翌週3月16日には物資送付の準備を済ませ、19日には肌着14万枚・ソックス10万枚・パジャマ2,500枚総額2億円相当の物資を岩手県・宮城県、福島県の災害対策本部指定場所に送りました。
仙台市若林区の営業所では、現場判断により同区内の避難所で営業所の持っていた商品と営業用サンプルを配布しました。営業所も被災しましたが、被災地でのニーズを一番理解している現場が自発的に動きました。　

NGO関係者や個人等多くの方からもE-mail1・電話・ホームページの書き込みを通じて、物資が不足しているといった個別の情報や要望が寄せられました。しかし、私たちは行政の窓口を通して各県指定の物資集積所に届けました。被災地のニーズに公平、かつ広く対応するためにはその方法が最善と判断したからです。個別の要望に合わせて送るのではなく、物資集積所への送付情報をホームページで公開し、必要な方は集積所で物資を受け取ってくださるようお願いしました。
４月中旬ごろまで毎日のように情報が寄せられており、担当社員がその全てに返信をしています。
5月になると、「薄着になるので女性のためにブラジャーが欲しい」「アトピーの被災者のための専用の肌着が必要」といった、ピンポイントでの要望が届くようになりました。ブラジャーは、個人によってサイズが異なるので、避難されている方のニーズに合わせて送ることが求められます。このときは、避難所の女性の方に取りまとめ役をお願いして、無事に避難所に送ることができました。

Ｄ：一般からの情報だけでなく、支援団体からの協力要請などはありましたか。

―　3月下旬に、公益社団法人「Civic Force」から「南三陸町で避難している17,600人のために風呂を提供するので、入浴後に着替えるための靴下や肌着を用意したい。靴下20,000足、肌着27,839枚を販売してほしい」との電話をいただきました。
大量の製品を可能な限り短時間で準備しなくてはならず、試行錯誤しながら大幅な割引価格という形でも協力させていただきました。
他の支援団体からも販売依頼の問い合わせが相次ぎ、支援団体の迅速な支援に対応できるよう、物資支援担当を置いて対応していきました。

Ｄ：NGOと連携協力する中で新たな発見や、継続的な連携の可能性などは見えてきましたか。

―　1月に開催したCSR担当者会議に、公益社団法人「Civic Force」スタッフの方にお越しいただき、支援活動報告を行いました。その際、支援団体としての感じた課題や当社のできることについて意見交換し、今後の支援のためのパートナーシップを検討する契機となりました。
パートナーシップにより、次の災害時には、さらに迅速な支援ができると思います。また、スタッフの方から緊急支援時に食品用ラップが重宝したというお話も伺いました。当社では肌着だけではなく、さまざまな部材（生産材）の生産や、スポーツクラブの運営なども行なっており私たちが支援できるのは肌着のみならず、他にもさまざまな支援の可能性があるという発見がありました。
一方で、支援団体の皆様がわたくしども企業の扱う製品やサービスをすべて把握することは不可能です。平常時から私たちが「供給可能品リスト」を作成し、「Civic Force」に提示しておくことで、緊急支援時に活かしたいと思います。

Ｄ：2011年8月21日より、3種類の寄付付き商品を販売されています。なぜ寄付付き商品を販売することになったのでしょうか。

―　震災前の2011年1月時点で「快適工房PREMIUM」という商品は寄付付き商品として販売することが決まっていました。社内に「グンゼラブアース倶楽部」という、従業員・役員・退職者で希望者が入会できる社会貢献のしくみがあります。会員からの寄付と会社のマッチングギフトを原資として、NGO／NPOなどへの支援を行っています。 1月時点では「快適工房PREMIUM」の売上金の一部を、「グンゼラブアース倶楽部」を通じてNGO活動に寄付する予定でしたが、東日本大震災発生を受け、今年度は復興支援の寄付付き商品として販売することに決めました。最終的には、当商品以外にも2つの商品「快適工房」「the GUNZE」を加え、計3種類の商品を寄付付き商品として販売しています。

また、グループ会社である東北グンゼ株式会社（山形県寒河江市）でメインに生産されているこれら対象商品をご購入いただくことで、「東北を応援していこう！」という機運を高めたいとの思いも込めています。 2012年3月末までの対象商品の売上1枚につき1円を「あしなが育英会」に寄付します。過去の販売実績から、3月末までの販売見込みを立て、寄付予定額を約8百万円としています。

復興のフェーズによって、NGO等の行う支援活動内容や必要とされる支援金の額も変わるでしょう。そのため、復興支援としての寄付はいったん3月末までと区切りましたが、「快適工房PREMIUM」は引き続き他のＮＧＯ等活動に対する寄付金付き商品として販売予定です。

「あしなが育英会」は、東日本大震災で保護者が死亡・行方不明または重度後遺障害になった子どもたちに特別一時給付金を給付してきた。また、経済的な支援だけでなく、残された子どもたちの“心を癒す家”「東北レインボーハウス（仮称）」の建設も決定されている。
グンゼ「がんばろう！東北」キャンペーンによる売上の一部は、3か月ごとに「あしなが育英会」に寄付されており、グンゼのホームページでは寄付額も公表されている。第一回目（8月～9月）は、2,352,957円、第二回目となる10月～12月には3,119,650円を寄付することができた。

Ｄ：企業側の声として「寄付先となるNGO団体を見つけることが困難だった」という話をよく聞きます。「あしなが育英会」への支援はどのように検討されたのでしょうか。

―　過去の災害時には、国際人道支援組織である「ジャパン・プラットフォーム」や日本赤十字社、中央共同募金会などを通じた寄付を行なってきました。今回の寄付は、実際に被災地に入り、継続的活動を行う団体の活動資金として使われる即効性のある支援であること。そして、その団体の事業報告では支援内容が丁寧に記載されており、支援効果が分かりやすいという理由から「あしなが育英会」に決めました。
義援金・支援金は社員からの寄付と会社からの同額寄付によるマッチングギフトで支援していますので、自分たちが行った支援に対し、どのような成果があったのかを社員にフィードバックしていきたいと考えています。

前述の「グンゼラブアース倶楽部」では、会員アンケートをもとに支援先を決めています。過去には「あしなが育英会」にも支援した経緯があります。ですから、活動内容は熟知しており、NGO等への支援が決定した早期の段階から、支援候補先として「あしなが育英会」の名前が挙がっていました。
最終的な決定理由は二点あります。一つは、寄付受入期限を設けておらず、息の長い支援活動が予定されていたこと。私たちは“肌着を通じた継続的な支援”をすることに決めていましたので、寄付受入期限を設けていないことがポイントでした。二つ目には、団体の活動内容が「震災遺児支援」と、消費者の方にも伝わりやすいものであったからです。
また、「グンゼラブアース倶楽部」でも、これまで子ども支援を重点的に行ってきたことや、検討の過程で「震災遺児のために何かしたい」「被災児童・生徒への支援が必要ではないか」という社員・役員からの意見があったことも後押しとなりました。

Ｄ：東日本大震災復興支援に取り組むことで、株主や社員からはどのような反応がありましたか。

―　株主優待として当社カタログの中からお好きな商品を株主に選んでいただいておりましたが、今年は商品を受け取る代わりに復興支援活動に寄付ができる仕組みも作りました。
その結果、2.9%の株主が商品ではなく、寄付を選択されています（※1口3,000円の寄付として設定。保有株数によって応募できる口数が異なる）。寄付先には、「あしなが育英会」「日本ユニセフ協会」「日本赤十字社」の3団体を選び、活動説明も掲載しました。株主優待を通じて、あしなが育英会には148万円、日本ユニセフ協会には39万円、日本赤十字社には33万円を寄付することができました。

社員については、CSR推進室が呼びかけなくとも自発的な活動が生まれていたと感じています。震災前から地域社会貢献活動等に関心が高い事業所もあり、自ら支援に動いているところもあります。
例えば、鳥取県にある倉吉グンゼ株式会社では「当初は花見を自粛する予定だったが、花見というイベントを通じてカンパを募り、被災地支援に充てることにした」と聞いています。

また、東北グンゼ株式会社は1978年から地域交流活動として社員が特別養護老人ホームを慰問し、肌着の贈呈などを行ってきましたが、震災発生後には、東北グンゼのスタッフが仙台市に駆けつけ、物資運搬や配布を手伝いました。
昨年10月には、「グンゼラブアース倶楽部」の2011年度支援先20団体が決定しました。その内、5団体（「JEN」「Civic Force」「森は海の恋人」「ＡＭＤＡ」「カタリバ」）が災害支援・復興支援に関わる団体です。これを見ても、会社としてだけではなく、社員自身も復興支援は継続的に必要であるという意識を持っているのだと思います。

（取材後記）
取材後記：
「真新しい肌着を身に着ける」。避難所暮らしが続く被災地の方々にとってどんなにうれしいことだっただろう。肌着の価値を知り尽くしたメーカーだからこそできる、確実に、届けたいという想いが結実した支援。その支援には、新潟・中越地震からの経験の蓄積があった。日常の積み重ねが非常時にも活かされていることを実感した（鈴木暁子）

震災時の緊急支援を契機につながりのできた「Civic Force」とは、一回限りの協力ではなく、次の災害に備えたパートナーシップを検討しているという。災害は起きてほしくないものだが、平時から企業とNGO／NPO相互のリソースを把握し、初動体制で協力できる仕組みづくりは地域にとっても心強いものだ。このような検討が進む背景には、従来から「グンゼラブアース倶楽部」という社員参加型の社会貢献プログラムがあり、NGO／NPOを身近に感じる社風が、“協働”を推し進めているのではないかと感じた。（須磨珠樹）

取材日：2012年1月27日
文責：一般財団法人ダイバーシティ研究所

＊グンゼ株式会社「東日本大震災に関する対応について」
http://www.gunze.co.jp/info/news/detail/20110316/index.html

＊グンゼ株式会社　「CSR（企業の社会的責任）」※復興支援に向けた取組みはこちらにも掲載されています
http://www.gunze.co.jp/csr/index.html

＊「グンゼラブアース倶楽部」
http://www.gunze.co.jp/csr/love_earth/index.html

＊あしなが育英会
http://www.ashinaga.org/

＊公益社団法人「Civic Force」
http://civic-force.org/

（印刷用）