企業による震災復興支援【被災者の雇用創出事例（１）】

東日本大震災被災地応援プロジェクト！	（C）一般財団法人　ダイバーシティ研究所
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	企業による復興支援
	寄付で応援する商品
	├味の素冷凍食品株式会社　「東北に元気を！明日を耕すプロジェクト」　　ギョーザ、おつまみギョーザ、他 ├公益財団法人京都地域創造基金　　「カンパイチャリティキャンペーン」 ├有限会社クック＆ダイン　　「南部鉄器・手作り両手鍋」他 ├株式会社不二家　　「カントリーマアムアソート東北応援」 ├SC. Cosmetics株式会社　　スチームクリーム「LOVE FOR JAPAN」 ├グンゼ株式会社「快適工房」他 └株式会社ラッシュジャパン　　ボディクリーム「チャリティポット」他
	被災者の「生きがい」仕事づくり
	├株式会社福市　「東北支援プロジェクトEAST LOOP」 └ソーケングループ　「癒し一番　間伐材　ひのき」
	復興・自立と支援のマッチング
	├株式会社ベネッセコーポレーション　　「進研ゼミ高校講座　努力賞ポイント募金」 └株式会社東京証券取引所　　「震災復興支援グッズ」

企業による復興支援【「生きがい」仕事づくり（１）】

会社名：ソーケングループ　http://www.soken-net.co.jp/
商品名：「癒し一番　間伐材　ひのき」
販売価格：525円（税込）

あすと長町で製作されている「癒し一番　間伐材　ひのき」

ソーケングループは、（株）ソーケン、（株）ソーケン製作所、プロシード（株）からなるグループ企業で、震災前からCSRに熱心に取り組んできた企業である。震災後は、被災地への寄付の他、復興応援イベントや本業を活かした「縁台つくろうプロジェクト（※１）」を実施し、被災地支援活動を続けている。

2011年6月に開催された「CSRプラスセミナー（※２）」に、有吉徳洋代表取締役が参加。セミナーでは、仙台市あすと長町仮設住宅を訪問し、住民の方に生活上の課題を伺った。これが契機となり、ソーケングループとして、仮設住宅への継続的な生活支援に取り組んでいくことを決意する。

現在は、間伐材を利用した入浴材「癒し一番　間伐材　ひのき」の作業過程の一部をあすと長町仮設住宅住民の方に担っていただき、仮設住宅での雇用創出を行っている。

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ダイバーシティ研究所（以下、Ｄ）：あすと長町仮設住宅ブランドとして、「癒し一番　間伐材　ひのき」の販売が始まっていますが、この商品の製作を始めた経緯と製作の仕組みを教えてください。

―　6月以降、あすと長町仮設住宅にて、夏場の室温を下げるための消熱塗装工事や物置作り等の活動を行ってきました。訪問する度に仮設住宅の住民の方と意見交換の場を持ち、生活上の課題を伺うようにしています。住民の方の中には、もともと農業を営んでいた方も多く、「求人はあるが、高齢者や子育て中のお母さんが就ける仕事が少ない」、「冷暖房を我慢して仮設住宅の光熱水費を抑えている」という話を伺い、仮設住宅内でできる内職仕事つくりが急務であると感じました。
　ソーケングループでは、5年程前から間伐材を用いた商品開発を行っており、その一つがヒノキの入浴材や芳香材としての効能を活かした「癒し一番　間伐材　ひのき」という商品です。これまで、首都圏の自治体とも連携しながら、間伐材の加工は福祉作業所へ依頼し、障がい者の雇用支援にもつなげてきました。製品が出来上がるまでには、（１）間伐材の切り出し　（２）やすりがけ　（３）梱包　という作業工程がありますが、その内、（２）と（３）をあすと長町の住民の方に依頼することにしました。

ソーケングループ　有吉徳洋代表取締役。
後ろの壁には、支援活動のルポが貼られている。
活動の翌日にはルポを作成し、自社HPでも公開している。

　まず、運営委員会（※３）を通じて、内職仕事のグループ（内職クラブ）を立ち上げてもらい、私たち企業とのやり取りは内職クラブのリーダーを通じて行っています。現在は、興味を持っていただいた6名の方がこのグループに所属しています。集会所に皆さんが集まり、一緒に仕事をすることでコミュニケーションの活性化にもつながっているようです。また、作業をしながら材料のヒノキの香りに心が癒されたという声もいただきました。
プロジェクトの立ち上げにあたっては、女性のリーダー役の方とうまくつながれたことが成功の要因でした。リーダーご自身はお仕事をお持ちでしたが、住民の方にきめ細やかな情報伝達をしてくださり、内職クラブのバックアップもしていただいています。
　この商品の販売価格500円（税抜）のうち、60円を内職クラブを通じてあすと長町住民の方へ、125円を福祉作業所へ、100円～200円を里山の方への人件費として支払っています。また、従来から110円は児童養護施設の修繕費として積み立てています。

Ｄ：現在までに、どのくらい販売されたのでしょうか。

―このプロジェクトは10月20日からスタートし、10月29日に初めての販売会を行いました。これまでに600個以上の生産・販売を行っています。販売に際しては、以前より交流のあったイオングループのＣＳＲ担当者の方にご協力いただき、イオン弘前店、大垣店で販売しました。販売会当日は、当社のイラストレーターによる似顔絵イベントも同時開催し、多くの方にご来場いただきました。購入者からは「購入することで、誰に寄付が届くのかが分かりやすく、応援したい」と言っていただきました。
　最近では、ソーケングループが内装を手がけたショールームの内覧会時のノベルティグッズや、美容室でのお客様へのプレゼント、そしてデザイン専門学校の文化祭の来場者プレゼントとして、本商品をいろいろな場面で利用していただいています。

Ｄ：このプロジェクトの今後の予定を教えてください。

―　ソーケングループでは、「癒し一番　間伐材　ひのき」以外の間伐材商品として、日本理化学工業さん（※４）とのコラボレーションで「つみき黒板」という商品を製作しています。日本理化学工業はチョークを製作している企業で、職員の7割に障がい者を雇用していることでも有名です。日本理化学工業ではダストレスチョークを作成し、ソーケングループでは間伐材を加工して、月2,000セットを作っています。とても人気のある商品ですが、現在の体制ではロットを増やすのは難しいため、今後は内職クラブの方にも担っていただきたいと考えています。

ソーケングループと日本理化学工業で製作している「つみき黒板」

　首都圏の中間支援組織には、地域ＮＰＯと企業とをマッチングし、雇用創出に寄与している団体があります。仮設住宅での雇用創出についても、私たち一つの企業だけでは限りがありますので、内職クラブが中間支援組織の役割を担い、今後は他の企業からも仕事を受注し、仮設住宅で仕事を希望する方全員が仕事に就けることを期待しています。
　当社では、あすと長町仮設住宅で仕事をご希望される方がいらっしゃる限り、この事業を続けていく予定です。企業としては継続的に寄付を行うことは難しいですが、本業を通じた仕事づくりでなら継続的に関わっていきやすいのではないかと思います。同じ経営者仲間でも関心を持っている人は多く、今後、各企業がそれぞれの出来ることから始め、企業の復興支援活動が波及していくことを望んでいます。

（取材後記）
　8月以降、ソーケングループの消熱塗装作業や、「縁台つくろうプロジェクト」に参加させていただきました。毎回、多くの社員の方が参加され、既に仮設住宅の住民の方と顔なじみの方も多くいらっしゃいます。今回、改めて震災前からの取り組みについてお話を伺い、既にソーシャルビジネスとして本業を通じた社会貢献（CSR）に取り組んできたソーケングループだからこそ、有吉代表取締役をはじめとして社員の皆さんが住民の方々の意見をしっかり受け止め、雇用創出に取り組むことができたのではないかと思いました。（須磨珠樹）

取材日：2011年11月16日　　　　　
文責：一般財団法人ダイバーシティ研究所　

※１「縁台つくろうプロジェクト」http://endaitsukurou.wordpress.com/
　仮設住宅には抽選入居の地域も多く、コミュニケーション形成が難しいという課題解決のため、ソーケングループが縁台キットを作成し、そのキットを仮設住宅住民の方や支援団体とともに作るプロジェクト。日頃の集会所イベントの参加者層とは違い、お父さん世代の参加が多いのが特徴。作成後の縁台は、共有スペースで住民の方がお茶の時間に使ったり、バーベキューなどのイベントで活用されている。

※２「CSRプラスセミナー」
　日本財団・CANPANセンターでは、CANPAN CSRプラス連続セミナー「『強み』を活かす被災地支援　～企業だからできる、生活再建の支え方～」を開催。テーマは次のとおり。第1フェーズ「避難所生活を健康に乗り切る」、第2フェーズ「仮設住宅で新しい生活を始め、復興への第一歩を踏み出す」、第3フェーズ「復興に向けた長期のまちづくり」、「仮設住宅での冬を乗り切るWS」。第2フェーズでは、仙台市・あすと長町仮設住宅を訪問した。本セミナーにはダイバーシティ研究所も企画運営協力している。

※３　あすと長町仮設住宅運営委員会　http://asutonagamachi.blog.fc2.com/
あすと長町仮設住宅内に立ち上がった運営委員会で、現在住民の半数近くの方が入会している。

※４　日本理化学工業　http://www.rikagaku.co.jp/handicapped/
ダストレスチョーク製造企業。社員の70%以上が知的障がいのある社員。障がい者の今ある能力で仕事ができるように作業方法を工夫、改善している。「日本でいちばん大切にしたい会社（坂本光司著、あさ出版）」にも掲載されている。

（印刷用）